お墓のある墓地には、「管理者」を置くことが法律で決まっています。管理者とは、墓地を運営する人(経営者)が置く、墓地の世話をする責任者のことで、お寺の墓地なら住職、霊園なら管理事務所がこれに当たります。
墓じまいで遺骨を別のお墓や納骨堂へ移す「改葬(かいそう)」の許可を市区町村に申請するときは、この管理者に「遺骨がこのお墓に納めてあります」と証明してもらう「埋蔵証明」を付けます。
ところが、集落で代々使ってきた共同墓地や、家の敷地や畑の中にあるお墓、住職がいなくなったお寺の墓地では、この証明を書く人が見つからないことがあります。
結論
- 管理者がいなくても、市区町村が認めれば、代わりの書面で改葬許可を申請できます。ただし扱いは市区町村で分かれていて、許可しないところもあります。
- 先に管理者を探してください。地区の墓地なら区長や自治会長、お寺なら代わりの代表者、それでも分からなければ、遺骨がある市区町村の担当課に聞きます。
- 官報に載せたり立札を立てたりする手続きは、墓地の管理者が、縁のある人のいないお墓を片付けるときのものです。自分の家のお墓の墓じまいには要りません。
お墓の種類と証明する人
墓地を運営する人は、管理者を置いて、その住所と氏名を墓地のある市町村に届け出ることが法律で決まっています。なので、家族が「管理者はいない」と思っていても、届け出のうえでは誰かが管理者になっていることがあります。
集落の共同墓地や家の敷地のお墓の多くは、1948年に今の法律ができる前からある墓地です。こうした墓地は、法律のうえでは許可を受けたものとみなされるので、「みなし墓地」と呼ばれています。
全国の墓地・納骨堂のうち、個人や集落などが運営するものは88.7%を占めていて、公営の墓地よりずっと多いのが実情です。
誰が埋蔵証明を書くかは、お墓の種類で決まります。市の公式ページでは、次のように案内されています。
お寺の墓地
- 住職が証明する(国東市)
- 住職がいなければ、お寺の代わりの代表者か、檀家になっている宗教法人(舞鶴市)
地区の共同墓地
- 地区の区長が証明する(国東市・いわき市)
- はっきりしなければ、自治会長や町内会長(舞鶴市)
家の敷地のお墓
- 管理している本人が証明する(岡山市・塩尻市・国東市)
- 長野市は、本人か親族が申述書を書く
地区の共同墓地では、「管理者」という名前の人がいなくても、区長や自治会長が証明を書けば足りる市が多いことが分かります。なので、最初に聞く相手は区長や自治会長です。
家の敷地のお墓のように、管理している人が自分しかいないお墓では、申請する本人が証明を書くことになります。ただし、本人の証明だけでは認めない市区町村もあるので、次の章の探し方と、その先の市区町村の扱いを見てください。
管理者の探し方
- 1地区の人に聞く区長・自治会長・墓地の世話人に「この墓地の管理者は、今どなたになっていますか」と聞く。八王子市も、まず保健所や地域の自治会に確かめるよう案内している
- 2市区町村の担当課に聞く管理者は市町村に届け出る決まりなので、担当課の記録で分かることがある。諫早市は、調べると管理者が分かることが多いと案内している
- 3お寺の登記を確かめる住職がいなくても、お寺が宗教法人として残っていれば、法務局で登記事項証明書を取ると代表者が分かる
住職がいないお寺でも、お寺(宗教法人)そのものが無くなったとは限りません。宗教法人の決まりでは、代表役員(お寺なら住職)が亡くなるなどして欠け、すぐに後任を選べないときは、代わりに職務を行う「代務者」を置くことになっています。
なので、代務者がいれば、その人に埋蔵証明を頼めます。代務者が誰かは、お寺の登記や、同じ宗派のほかのお寺に聞いて確かめます。
活動していない宗教法人として国や都道府県が確かめているものは、2022年末の時点で3,329法人あります。お寺が法人として残っているか、代表者が誰かは、法務局で法人の登記事項証明書を請求すると確かめられます。
探しても管理者が分からないときの相談先は、遺骨が今あるお墓の市区町村です。たとえば福井市は地域保健課に、山口市は生活安全課に相談するよう案内しています。
自分のお墓がある市区町村の窓口と電話番号は、市区町村別の改葬許可の窓口で見られます。
市区町村の扱いの分かれ方
法律の規則では、管理者の証明を付けるのが難しい特別の事情があるときは、市町村長が必要と認める「これに準ずる書面」でよいとされています。総務省はこれを「代替書面」と呼んでいて、管理者が分からなくなった墓地からの改葬で何を求めるかを、2023年9月に公表した調査で88市町村に確かめています。
| 市町村の扱い | 市町村の数 |
|---|---|
| 代わりの書面を求める | 42市町村 |
| 書面は求めず、申請書の記載で許可 | 17市町村 |
| 本人の申請だけでは許可しない | 7市町村 |
| 申請の例がなく、未定 | 22市町村 |
半分近くの市町村が代わりの書面を求め、4分の1は申請の例がなく扱いを決めていません。なので、公式ページに何も書いていなくても、まず窓口に電話して「管理者が分からないお墓の改葬許可を申請したいのですが、何をそろえればよいですか」と聞いてください。
代わりの書面を求める42市町村が挙げた書面は、次のとおりです(1つの市町村が複数を挙げているので、合計は42になりません)。
- 埋火葬許可証・火葬証明書・改葬証明書:13市町村
- 墓地の場所の地図・墓石の写真など:10市町村
- 申請者の戸籍の謄本・除かれた戸籍の謄本:8市町村
- 申請者の申立書:8市町村
- 改葬元との契約書類・領収書・お寺の過去帳など:7市町村
- 地区の代表者(自治会長など)の証明書:6市町村
- 土地の持ち主・お寺の住職などの証明:6市町村
- 隣の区画の人や、別の世帯の親族・知人の証明:5市町村
- 証明印が押されないなどの経緯の記録:3市町村
一番多い埋火葬許可証は、火葬のときに市区町村が出す許可証で、火葬場で印を押して返されるものです。八王子市は、骨つぼの中や、骨つぼを納めた箱の中に一緒に入っていることがあると案内しています。
なので、役所に相談する前に、お墓の中の骨つぼや、家に残っている箱を一度のぞいてみてください。
県庁所在地・政令市・東京の区の57市区の改葬許可の公式ページでは、管理者の証明が受けられないときの扱いを書いているのは4市区で、そのうち出す書類まで書いているのは2市区(高松市・長野市)だけでした。山口市は相談先だけを書き、堺市は証明印がなければ申請できないと書いています。
お寺の住職はいるのに証明を断られているなら、話は別です。その場合は国が2026年1月に示したQ&Aに沿って進めることになるので、お寺が埋蔵証明書を出してくれないときを見てください。
代わりの書面の例
長野市は、お墓を申請者本人が管理していて、お寺(菩提寺)もないなどの理由で、本人か親族が埋蔵・収蔵証明書を証明することになる場合に、申述書・墓地の位置図・墓地の写真を出すよう案内しています。申述書の様式は公式ページに置いてあり、欄は次のとおりです。
申述書の見本(長野市の様式の欄。中身は例)数字は仮
| 理由 | ●●地区の共同墓地・当家で管理・菩提寺なし | ① |
| 令和 年 月 日 | 7年12月1日 | |
| 住所 | 長野市〇〇町1-1 | |
| 氏名 | 〇〇 太郎 | ② |
| 添付書類 | □お墓の写真 □墓地の地図 | ③ |
- ①長野市の記載例では「当該墓地は●●地区の共同墓地内にあり、代々、当家で管理しており、菩提寺もないため」。地区の名前を入れ、誰が管理してきたか、お寺が無いことを書く
- ②埋蔵・収蔵証明書の証明者の氏名を、必ず本人が自分で書く。家族が代わりに書かない
- ③お墓の写真と墓地の地図を一緒に出す。写真は、墓石と、名前を刻んだ墓誌が読めるように撮る
申述書は、「第三者が証明できないので、申請者本人か親族が証明します」と役所に向けて書く書面です。なので、理由の欄には、管理者を探した結果(区長に聞いたが管理者はいない、など)まで書いておくと、担当者に状況が伝わります。
ほかの市では、書面の名前も、誰が書けるかも違います。
諫早市
- 管理者がいなければ「申立書」を付ける
- 申し立てができるのは、お墓の名義人(墓地使用者)だけ
- 申請書に偽りが分かれば、証明が取り消されても異議はないと書く
高松市
- 管理者が不明で証明を受けられないときは、市営墓地から移すときと同じ書類
- 戸籍(除籍)謄本か埋火葬許可証など、続柄の分かる戸籍、墓地の場所が分かる地図
- 名義人が亡くなっていれば、申請者の誓約書
八王子市
- 管理者がいない・不明な共同墓地は、自分の家の墓地(自家墳墓)とみなす
- 墓地経営許可書の写しなどを付ける
- 出せない正当な理由があれば、土地の登記簿の写しなどを用意して相談
諫早市のように、申し立てができる人をお墓の名義人に限る市では、名義人が亡くなっていると、先に誰が名義を継いだかを決めておく必要があります。継ぐ人の決め方は、名義人が亡くなっている・書けないときの墓じまいで確かめられます。
高松市が求める戸籍は、亡くなった人の本籍・氏名・死亡年月日が分かるものと、亡くなった人と申請者の続柄が分かるものです。昔に亡くなった先祖の分は、本籍地の市区町村で「除籍謄本」や「改製原戸籍」を取ることになるので、何代前まで必要かを、先に窓口に聞いてから取ってください。
遠くて窓口に通えないなら、役所に出す書類づくりは行政書士に頼めます。業者一覧には、改葬許可の書類づくりを受ける行政書士が5社載っていて、改葬許可の手続きを受ける業者の一覧で見られます。
申請書そのものの書き方は、改葬許可の申請の流れと必要書類で確かめてください。
無縁墳墓の改葬との違い
「管理者がいないお墓」と「無縁墳墓(むえんふんぼ)」は、別のものです。無縁墳墓とは、亡くなった人の縁故者(遺族や親族など、縁のある人)がいないお墓のことで、墓地の管理者が、使う人のいなくなったお墓を片付けるときに使う言葉です。
自分の家のお墓の墓じまい
- 申請するのは、遺骨を移す家族(名義人か、名義人の承諾を得た人)
- 付けるのは、管理者の証明か、その代わりの書面
- 官報や立札は要らない
無縁墳墓の改葬
- 申請するのは、墓地の管理者(都立霊園なら霊園管理事務所長)
- 縁故者に1年以内に申し出るよう官報に載せ、立札を1年間立てる
- お墓の写真と位置図を付ける
官報とは、国が毎日発行している公報で、法律や公告を載せる新聞のようなものです。総務省は、無縁墳墓の改葬は官報と立札で1年間公告することが求められるなど、ふつうの改葬より慎重な手続きだと説明しています。
八王子市も、無縁墳墓の改葬の案内を「墓地管理者向け」としています。
つまり、自分の家のお墓で、遺骨の誰かの子や孫であるあなたが申請するなら、縁故者がいるので無縁墳墓ではありません。管理者がいないからといって、官報に載せたり立札を立てたりする必要はありません。
区画の後始末
改葬許可は遺骨を移す許可で、墓石を片付けて区画をどうするかは、別に決めることです。国東市は、地区の墓地から改葬して墓じまいをするときは、区長や地区の人に、お墓があった場所の区画の扱いを確かめるよう案内しています。
国東市は、本人だけで管理しているお墓でも、地区の墓地の中にあることがあると注意しています。なので、自分の家だけのお墓だと思っていても、区長や隣の区画の家に「ここを更地にして返しますが、決まりはありますか」と聞いてから、石材店に工事を頼んでください。
| お墓の場所 | 区画の扱いを聞く相手 |
|---|---|
| 地区の共同墓地 | 区長・自治会長 |
| お寺の墓地 | 代務者・宗教法人 |
| 家の敷地 | 土地の持ち主(家族) |
墓石の撤去の見積もりの取り方と、工事の順番は、墓じまいの段取りと日数で確かめられます。撤去を受ける石材店は、墓石の撤去を受ける業者の一覧から、区画の広さを伝えて2社以上に見積もりを頼めます。
今日やること
- 1区長・自治会長に聞く「〇〇墓地の管理者は、今どなたになっていますか。墓じまいで、改葬許可に使う証明をお願いしたいのですが」と聞く
- 2市区町村に電話する遺骨がある市区町村の窓口に「管理者が分からないお墓の改葬許可を申請したいのですが、代わりに何の書類をそろえればよいですか」と聞く
- 3書類を集める骨つぼの箱の中などで埋火葬許可証を探し、墓石と墓誌の写真を撮り、墓地の場所が分かる地図を用意する