遺骨の一部を、別のお墓に納めたり手元に置いて供養したりするために分けることを「分骨(ぶんこつ)」といいます。また、遺骨を粉状に砕いて海や山にまくことを「散骨」、遺骨を自宅に置いて供養することを「手元供養」と呼びます。
結論
- 改葬許可が要るのは、遺骨を別のお墓や納骨堂へ移すときです。一部を分けるだけなら分骨証明書で足り、自宅に置く・散骨するときも、国は改葬許可は要らないとしています。
- ただし、散骨のためにお墓から遺骨を取り出すときの扱いは、市区町村で違います。取り出す前に、今のお墓がある市区町村に聞いてください。
- 分骨には分骨証明書が要ります。火葬のときに分けるなら火葬場に、お墓に納めたあとで分けるなら墓地の管理者に頼みます。
| したいこと | 改葬許可 | 用意するもの |
|---|---|---|
| 別のお墓へ移す | 要る | 埋蔵証明など |
| 一部を分ける | 要らない | 分骨証明書 |
| 自宅に置く | 要らない | 証明書を保管 |
| 散骨する | 市区町村で違う | 散骨証明書 |
改葬許可が要る場合・要らない場合
法律でいう「改葬」は、お墓や納骨堂に納めた遺骨を、別のお墓や納骨堂に移すことです。なので、遺骨を自宅に置くことや散骨することは、この「改葬」には当たりません。
厚生労働省も、墓じまいで取り出した遺骨を自宅に置く場合と、散骨する場合は、市区町村の改葬許可は必要ないとしています。東京都も、散骨は法律に定めのない行為なので、法による手続きは無いと案内しています。
ただし、お墓から遺骨を取り出して散骨するときの扱いは、区市町村で違うと東京都は書いています。実際に、長野市と伊勢市では、次のように案内が分かれています。
長野市
- 散骨には法令上の許可の決まりが無い
- なので、改葬許可も要らない
伊勢市
- 散骨を一律に禁止はできない
- ただし、取り出して散骨するための改葬許可は、原則出さない
県庁所在地・政令市・東京の区の57市区の改葬許可の公式ページを、2026年10月18日に見たところ、散骨するときの扱いを書いていたのは1市区(長野市)だけでした。なので、自分のお墓がある市区町村の考え方は、窓口に電話して確かめるしかありません。
自分のお墓がある市区町村の窓口と電話番号は、市区町村別の改葬許可の窓口で見られます。遺骨の一部を移す先が別のお墓や納骨堂なら、改葬許可の申請の仕方は改葬許可の申請の流れと必要書類で確かめてください。
分骨と分骨証明書
分骨した遺骨を別のお墓や納骨堂に納めるときは、遺骨を納めていたところの管理者が出す証明書を、新しい納め先の管理者に出すことが、法律の規則で決まっています。この証明書が、一般に「分骨証明書」と呼ばれているものです。
分骨証明書を誰に頼むかは、いつ分けるかで違います。
火葬のときに分ける
- 火葬場の窓口に、分骨することを前もって伝える
- 千葉市の斎場では、証明書は分骨ごとに300円
- 分ける分の骨つぼも用意する
お墓に納めたあとで分ける
- 今のお墓や納骨堂の管理者に、分骨証明書を頼む
- 残りの遺骨(本骨)を動かさなければ、改葬の手続きは要らない(広島市)
57市区のうち、分骨の手続きを公式ページに書いていたのは12市区で、そのうち6市区は、分骨に改葬許可は要らないとはっきり書いていました。改葬許可が要るのは、残りの遺骨(本骨)まで別のお墓や納骨堂へ移すときです。
千葉市は、分骨を「別のお墓に納めたり、手元供養したりするため」に分けることと説明しています。手元に置くだけの遺骨でも、あとでお墓に納めることになったら分骨証明書を出すことになるので、もらった証明書は遺骨と一緒に保管しておいてください。
自宅に置く(手元供養)
遺骨を自宅に置いて供養することは、改葬に当たらないので、改葬許可は要りません。ただし、自宅の庭に遺骨を埋めることは別の話で、法律で、遺骨を埋めるのは墓地の中だけと決まっています。
自宅に置いた遺骨を、あとでお墓や納骨堂に納めるときは、その遺骨がどこから来たかで、要る書類が変わります。57市区のうち、自宅で保管する遺骨の扱いを書いていたのは4市区(札幌市・福岡市・長野市・那覇市)でした。
火葬のあと、ずっと自宅に置いていた
- 改葬許可は要らない(福岡市・長野市・那覇市)
- 火葬のときにもらった埋火葬許可証(火葬許可証)を、納め先の管理者に出す
お墓から取り出して、自宅に置いていた
- 別のお墓に納めるときに、改葬許可が要る(札幌市)
- 取り出すときに、墓地の管理者から埋蔵・収蔵証明書をもらって保管しておく
札幌市は、お墓から取り出して自宅に置くこと自体は改葬に当たらないとしながら、将来に備えて証明書を遺骨と一緒に保管しておくよう案内しています。墓じまいで遺骨を自宅に移すなら、取り出す日までに、今のお墓の管理者に「埋蔵証明書(収蔵証明書)を書いていただけますか」と頼んでおいてください。
お寺がこの証明書を書いてくれないときの進め方は、お寺が埋蔵証明書を出してくれないときで確かめられます。
散骨と国のガイドライン
厚生労働省の令和2年度(2020年度)の研究で、散骨の業者向けの「散骨に関するガイドライン」がまとめられました。ガイドラインは、散骨を「火葬した遺骨を粉状に砕き、陸地か水面にまくこと」と決めたうえで、業者が守ることを並べています。
業者と契約するときは、ガイドラインの項目に沿って、次の点を確かめてください。
散骨の契約で確かめる項目(国のガイドラインの項目。中身は例)数字は仮
| 散骨する場所 | 〇〇沖の海域 | ① |
| 遺骨の形 | 粉状に砕く | ② |
| 一緒にまく物 | 花びらのみ | ③ |
| 契約の方法 | 文書(契約書) | ④ |
| 費用の明細書 | 契約書に添付 | ④ |
| 約款 | 公表・求めれば提示 | ⑤ |
| 散骨証明書 | 散骨のあとに交付 | ⑥ |
- ①陸なら、あらかじめ決めた区域(川や湖は除く)。海なら、海岸から一定の距離以上離れた海域
- ②遺骨の形が見て分からないように、粉状に砕くことになっている
- ③プラスチックやビニールでできた物をまくなど、自然環境に悪い影響を与えることはしない
- ④契約は文書で結び、費用の明細書を契約書に付けることになっている
- ⑤約款は、契約の内容を書いた決まりのこと。業者は用意して公表し、求められたら見せる
- ⑥散骨したことを示す書類。業者が作って渡すことになっている
また、ガイドラインでは、業者は散骨の件数や場所を年度ごとにまとめ、ホームページなどで公表することになっています。なので、業者を比べるときは、その業者のホームページに実施状況が載っているかも見てください。
散骨は、散骨する場所の市町村の条例で、禁止や制限をしているところがあります。自治体の条例を調べている地方自治研究機構の一覧(2026年4月1日時点)では、散骨を規制する条例のある市町村は16市町村でした。
| 条例の決まり | 市町村の数 |
|---|---|
| 散骨を禁止 | 3市町村 |
| 原則禁止(届出などで可) | 3市町村 |
| 散骨場を許可制に | 11市町村 |
散骨を禁止しているのは長沼町(北海道)・松島町(宮城県)・南阿蘇村(熊本県)で、たとえば長沼町の条例は、墓地以外の場所で遺骨をまいてはならないとしています。岩見沢市(北海道)は、散骨場を許可制にしたうえで、散骨場以外での散骨を原則禁止しているので、表では2つの行の両方に入っています。
静岡県では、熱海市・伊東市など4市町村に条例があります。熱海市と伊東市は、海での散骨にはこの条例を使わないとして、海洋散骨のガイドラインや指針を別に定めています。
墓じまいのあと散骨する順番
墓じまいのあと散骨するときも、お墓を片付けて区画を返すところまでは、ほかの墓じまいと同じです。違うのは、遺骨を取り出す前に、市区町村の扱いと散骨の業者を決めておくところです。
- 1市区町村に聞く今のお墓がある市区町村に、散骨のために取り出すときに改葬許可が要るか、要らないなら管理者に何を見せればよいかを聞く
- 2業者と文書で契約する散骨する場所と、その市町村の条例を確かめてから、契約書と費用の明細書をもらう
- 3取り出しと撤去管理者に証明書を頼み、遺骨を取り出す。墓石を片付けて区画を返す
- 4散骨と書類の保管散骨のあと散骨証明書を受け取り、火葬許可証などの書類と一緒に保管する
伊勢市は、散骨したあとの埋葬許可証の扱いには特に決まりが無いので、自分で管理するよう案内しています。全部を散骨せずに一部を手元に残すなら、あとでお墓に納めることも考えて、書類は捨てずに取っておいてください。
墓石の撤去は、石材店に頼みます。業者一覧で墓石の撤去を受ける業者は18社あり、墓石の撤去を受ける業者の一覧から見積もりを頼めます。管理者への伝え方と、区画を返すときの届け出は、墓じまいの段取りと日数で確かめてください。
今日やること
- 1したいことを決める遺骨を「全部散骨」「一部を手元に残す」「自宅に置く」のどれにするかを家族で決め、上の表で改葬許可が要るかを見る
- 2市区町村に電話する今のお墓の市区町村に「散骨(または自宅に置く)ために遺骨を取り出すとき、改葬許可は要りますか」と聞く
- 3管理者に証明書を頼む今のお墓の管理者に「分骨証明書(または埋蔵証明書)を書いていただけますか」と頼む