お墓の名義人とは、墓地を使う権利を持っている人のことで、法律や墓地の書類では「墓地使用者」や「使用者」と呼ばれます。墓じまいで遺骨を移す許可(改葬許可)を市区町村に申請するときは、この名義人が申請するか、名義人の承諾をもらって別の人が申請します。
結論
- 名義人が亡くなっているなら、まず誰がお墓を継ぐかを決め、墓地の管理者に名義の承継を届け出てください。
- 名義人でない人が申請するときは、名義人が書いた承諾書を付けます。窓口へ行く人を代えるだけなら、承諾書ではなく委任状です。
- 名義人が認知症などで書けないときは、家族が代わりに名前を書かずに、市区町村の窓口と成年後見の相談窓口に先に相談してください。
名義人が書ける
- 名義人が自分で申請する
- 子が申請するなら、名義人に承諾書を書いてもらう
名義人が亡くなっている
- 継ぐ人を決めて、墓地に承継を届け出る
- 継いだ人が名義人として申請する
名義人が書けない
- 家族が代わりに署名しない
- 市区町村と成年後見の窓口に相談する
お墓を継ぐ人の決まり方
お墓は、預金や家のように相続人で分けるものではありません。民法では、お墓は「祖先の祭祀(さいし)を主宰すべき者」、つまり法事などで先祖をまつる中心になる人が受け継ぐと決まっていて、この人を「祭祀承継者」と呼びます。
- 1名義人が決めていた人亡くなった名義人が、遺言などで継ぐ人を決めていれば、その人が継ぐ
- 2慣習で決まる人決めていなければ、その家や地域のならわし(慣習)で決まる。たとえば都立霊園は、配偶者と子の全員で話し合って決めた人も、継ぐ人として認めている
- 3家庭裁判所が決める人ならわしがはっきりせず、家族でも決まらないときは、家庭裁判所に「祭祀承継者の指定」を申し立てる
家庭裁判所の案内でも、お墓などは相続とは別の決まりで受け継がれ、遺産分割の対象にはならないとされています。なので、遺産分割の話し合いがまとまっていなくても、お墓を継ぐ人は先に決められます。
都立霊園では、継ぐ人を何で示すかによって、出す書類が分かれています。
| 継ぐ人の決め方 | 出す書類の例 |
|---|---|
| 遺言などで指定 | 遺言書の原本 |
| 葬儀や法事を務めた | 葬儀費用の領収書 |
| 家族の話し合い | 協議成立確認書 |
協議成立確認書は、配偶者と子の全員が話し合って継ぐ人を決めたことを書く書類で、話し合った人全員の記名と押印が要ります。兄弟が遠くに住んでいるなら、墓じまいの話をするときに、この書類のことも一緒に伝えておくと手間が減ります。
名義の承継の届け出
国が示した墓地の契約の見本(墓地使用に関する標準契約約款)では、名義人が亡くなったら、継ぐ人が住民票の写しを添えて墓地の管理者に届け出ます。また、継ぐ人がお墓を使い続けないときも、そのことを書面で届け出ることになっています。
ただし、実際に何を出すかは墓地ごとに違います。公営の墓地の公式ページでは、次のようになっています。
都立霊園
- 手数料は2,000円
- 名義変更が終わるまで2ヶ月程度
- 印鑑登録証明書は発行から3ヶ月以内、戸籍謄本は6ヶ月以内のもの
岐阜市・大分市・岡山市
- 岐阜市:名義人の死亡が分かる書類と戸籍
- 大分市:ほかの相続人全員の承諾書
- 岡山市:戸籍で血縁が分かる親族だけが継げる
青森市も、名義人が亡くなったら速やかに届け出るよう案内していて、名義変更の手数料は300円です。都立霊園の手続きには日数がかかるので、墓じまいの日程を決める前に、承継の届け出を先に出しておくと安心です。
自分のお墓の管理者には、「名義人が亡くなっています。墓じまいの前に名義の承継が要りますか。返還の届けと一緒に出せますか」と聞いてください。お寺の墓地なら住職、霊園なら管理事務所が聞く相手です。
承諾書と委任状の違い
名義人でない人が改葬許可を申請するときは、名義人の承諾書を付けることが、法律の規則で決まっています。名義人の承諾がもらえないときは、承諾書の代わりに、裁判で認められたことを示す判決などの写し(裁判の謄本)を付ける方法もあります。
承諾書と委任状は、似ていますが別の書類です。京都市は、名義人の代わりに手続きをするだけの人には委任状、名義人でない人が申請者になるなら承諾書が要ると分けて案内しています。
承諾書
- 申請者が名義人でないときに付ける
- 名義人が「改葬を承諾します」と書く
委任状
- 申請者の代わりに、別の人が窓口へ行くときに付ける
- 松山市は、親族や石材業者に頼むときに求めている
県庁所在地・政令市・東京の区の57市区について、改葬許可の公式ページに、名義人でない人が申請するときの承諾がどう書かれているかを、2026年10月18日に数えました。
| 公式ページの記載 | 市区の数 |
|---|---|
| 承諾のことを書いている | 29市区 |
| 今のお墓の名義人の承諾 | 26市区 |
| 移す先の名義人の承諾 | 5市区 |
| 申請書の欄で足りる | 6市区 |
| 書いていない | 28市区 |
多いのは、今のお墓の名義人の承諾を求める書き方です。ただし、練馬区・新宿区・大分市は、移す先のお墓の名義人と申請者が違うときに、移す先の名義人の承諾書を求めています。
また、名古屋市・山口市・横浜市は、この書類を「委任状」と呼んでいます。なので、書類の名前だけで判断せずに、自分のお墓がある市区町村の案内に合わせてそろえてください。
承諾書は、別の用紙を公式ページに置いている市区が13市区、申請書の中の承諾欄に書けばよい市区が6市区ありました。別の用紙のときは、たとえば前橋市の様式では、次の欄があります。
承諾書の見本(前橋市の様式の欄。中身は例)数字は仮
| 申請の日付 | 〇年〇月〇日付け | ① |
| 申請者 | 〇〇 太郎 | ② |
| 承諾の文 | 改葬許可申請について承諾いたします | |
| 承諾した日 | 〇年〇月〇日 | |
| 名義人の住所 | 〇〇市〇〇町1-1 | ③ |
| 名義人の氏名 | 〇〇 一郎(自署) | ④ |
- ①一緒に出す改葬許可申請書の日付と合わせる
- ②改葬許可を申請する人の名前。名義人の子が申請するなら、子の名前
- ③お墓の名義人の今の住所
- ④名義人が自分で書く。前橋市は、本人が自分で書けば印鑑を押さなくてよいとしている
自分のお墓がある市区町村が、誰の承諾を求めているかは、市区町村別の改葬許可の窓口の各市区のページで、公式ページの原文のまま見られます。申請書のほかの欄の書き方は、改葬許可の申請の流れと必要書類で確かめてください。
名義人が亡くなっているときの申請
名義人が亡くなっていて、継いだ人が申請するときは、名義人との続柄が分かる戸籍が求められます。たとえば高知市は、名義人が亡くなり申請者がお墓を継いでいるときは、続柄の分かる戸籍などを付けるよう案内しています。
ただし、57市区のうち、名義人が亡くなっているときの書類まで公式ページに書いているのは3市区(高知市・青森市・鹿児島市)だけでした。
- 1継ぐ人を決める家族で話し合い、誰がお墓を継ぐかを決める。決まらなければ家庭裁判所に申し立てる
- 2墓地に承継を届け出るお墓の管理者に、名義の承継の届けと、必要な戸籍などを出す
- 3継いだ人が申請する改葬許可は、継いだ人が名義人として申請する。ほかの人が申請するなら、継いだ人が承諾書を書く
戸籍は、亡くなった名義人と申請する人のつながりが分かるものを、本籍地の市区町村で取ります。墓地の承継と改葬許可の両方で戸籍を求められることがあるので、何通要るかを、墓地の管理者と市区町村の窓口の両方に聞いてから取ると、取り直さずにすみます。
遠くて何度も窓口に行けないなら、役所に出す書類づくりは行政書士に頼めます。業者一覧では、改葬許可の書類づくりを受ける行政書士が5社載っていて、改葬許可の手続きを受ける業者の一覧で見られます。
名義人が書けないとき
承諾書は、名義人が自分で書く書類です。仙台市は「使用者(契約者)本人の署名または押印」を、岐阜市は承諾欄への署名を求めているので、名義人が書けないからといって、家族が名義人の名前を代わりに書くことはしないでください。
厚生労働省は、認知症などでひとりで決めることが心配な人は、契約や手続きをひとりで行うのがむずかしい場合があると説明しています。そうした人を支えるのが成年後見制度で、成年後見人は家庭裁判所が選び、親族ではなく法律や福祉の専門家が選ばれることもあります。
ただし、57市区の公式ページには、名義人が承諾書を書けないときや、成年後見人が承諾書を書くときの扱いを書いているところはありませんでした。なので、自分で決めつけずに、次の2か所に聞いてください。
名義人がまだ自分で決められるうちなら、都立霊園や岐阜市のように、生きているうちに名義を継ぐ人へ移せる墓地もあります。名義人の体調に不安があるなら、墓じまいを決める前に、墓地の管理者に「生前に名義を変えられますか」と聞いておいてください。
親族の同意
改葬許可の申請に付ける書類として、法律の規則で決まっているのは、今のお墓の管理者の証明、名義人の承諾書、市区町村が必要と認める書類です。この中に、親族全員の同意書は入っていません。
一方で、公営の墓地の名義の承継では、親族の同意を書類で求めるところがあります。
改葬許可の申請
- 規則で決まっている書類に、親族全員の同意書は無い
- 求められるのは名義人の承諾
公営の墓地の承継
- 大分市:ほかの相続人全員の承諾書
- 岐阜市:配偶者や子・孫以外が継ぐなら、配偶者と子全員の同意書
- 都立霊園:話し合いで決めたなら協議成立確認書
書類で求められなくても、お墓に入っている人の子や兄弟に話さないまま進めると、あとで反対されて話を戻すことになりかねません。親族に話す時期と、移す先との契約の順番は、墓じまいの段取りと日数で確かめられます。
お寺の墓地で、名義のことよりも離檀料の話でもめているなら、離檀料の相場と払う義務を見てください。
今日やること
- 1名義人を確かめるお墓の使用許可証や契約書で、今の名義人の名前を確かめる。見当たらなければ、管理者に「〇〇家のお墓の名義人は、今どなたになっていますか」と聞く
- 2継ぐ人と書類を聞く名義人が亡くなっていれば、管理者に「名義の承継には何が要りますか。墓じまいの前に済ませる必要がありますか」と聞く
- 3承諾の書き方を確かめる市区町村別の改葬許可の窓口で、自分のお墓の市区町村が誰の承諾を、どの用紙で求めているかを見る