市や都が運営するお墓を「公営墓地(こうえいぼち)」といい、墓じまいでは、遺骨を取り出したあとに墓石を撤去して、借りていた区画を市や都に返します。区画を返すことを「返還(へんかん)」といい、返還届を出して、区画を元の状態に戻したことを市に確かめてもらうまでが、公営墓地の墓じまいです。
結論
- 公営墓地は、墓石を撤去して区画を元に戻してから返します。24自治体のうち12自治体が更地にして返すと書いていて、9自治体は工事のあとに職員が立ち会いや点検で確かめます。
- 管理料は、月割りで戻る市と、年度の途中で返してもその年度の分を払う市に分かれます。最初に払った使用料は、戻らないか、許可から2〜3年以内・区画を使っていない場合に限って一部が戻る自治体が多く、長く使ったお墓でも戻るのは千葉市と堺市でした。
- 同じ自治体の合葬墓に移すなら、先に市に聞いてください。墓所を返す人は合葬墓の使用料が無料か割引になる自治体や、公募とは別に申し込める自治体があります。
返還届の名前と付ける書類
県庁所在地・政令市などの公営墓地24自治体について、区画を返すときの手続きを、公式ページ・条例・募集資料で2026年10月18日に読みました。返すときの届け出の様式名を書いているのは22自治体で、名前は自治体ごとに違います。
たとえば仙台市と熊本市は「使用廃止届」、京都市は「使用終了届」で、ほかの多くは「返還届」です。札幌市は、名義の変更などと同じ「墓地手続申請書」で返還を申し込みます。
返還届の見本(項目名は静岡市・広島市・福岡市などの様式の書き方。中身は例)数字は仮
| 墓所の番号・面積 | 〇〇霊園 〇区〇番 4㎡ | ① |
| 使用者の住所・氏名 | 名義人が書き、実印を押す | ② |
| 返還の理由 | 改葬のため | ③ |
| 工事予定日 | 2026年〇月〇日 | ④ |
| 工事業者名・連絡先 | 〇〇石材 〇〇-〇〇〇〇 | ⑤ |
| 墓石撤去確認 | 市が書く欄 | ⑥ |
- ①使用許可証に書いてある霊園名・区画の番号・面積をそのまま写す。使用許可証は、仙台市・福岡市などで返還届に付けて出す
- ②届け出るのは使用者(名義人)。名義人が亡くなっているときは、先に名義の承継が要るかを管理事務所に聞く。仙台市は発行から3か月以内、神戸市は6か月以内の印鑑登録証明書を付ける
- ③遺骨をほかのお墓に移すなら「改葬」。遺骨を取り出す前に、改葬許可証を受け取っておく
- ④静岡市の様式には工事予定日の欄がある。撤去の予定日が決まってから届け出る
- ⑤石材店に返還の届けまで任せるときは、神戸市のように実印を押した委任状を求める墓地がある
- ⑥広島市の様式には、市が書く「墓石撤去確認」の欄がある。撤去を確かめてから受け付ける仕組み
名義人が亡くなっていて、まだ名義を継いでいないときは、名義人が亡くなっている・書けないときの墓じまいで、公営墓地の承継の決まりを先に確かめてください。改葬許可証のもらい方は、改葬許可の申請の流れと必要書類で確かめられます。
区画をどこまで元に戻すか
返す前に、墓石や囲いを撤去して、区画を借りたときの状態に戻します。これを「原状回復(げんじょうかいふく)」といい、どこまで撤去するかの書き方は、自治体で3つに分かれます。
| 公式ページの書き方 | 自治体の数 |
|---|---|
| 更地にする・全て撤去 | 12自治体 |
| 原状に戻すとだけ | 8自治体 |
| 書いていない | 4自治体 |
更地にすると書いている自治体は、撤去するものを具体的に書いています。川崎市は墓碑・囲い・カロート(遺骨を納める地下の部屋)など全ての設備を撤去し、樹木があれば根まで抜くとしていて、北九州市はコンクリートの基礎まで撤去するとしています。
カロートを撤去するかどうかは、墓地によって逆になります。
撤去する(2自治体)
- 川崎市は、カロートの底から30cm掘り下げて、職員の立ち会いで遺留物が無いかを確かめる
- 福岡市は、カロートの撤去前と撤去後の写真を出す。基礎の一部を残したり、埋め戻したりはできない
残す場合がある(2自治体)
- 都立霊園は、カロートの撤去が要らない墓所がある(完了届の写真の決まり)
- 千葉市の桜木霊園は、許可日が2018年4月1日以降の普通墓地はカロートを残す
ほかにも、堺市は2024年4月1日以降の届け出から、区画を囲む巻石(まきいし)も使用者が撤去することにしました。北九州市は、土の中に骨壺が残っていることがあるので、十分に掘り返すよう案内しています。
なので、撤去の見積もりを頼む前に、管理事務所に「返すときは、カロートと基礎、巻石、植木のどこまで撤去しますか」と聞いて、その答えを石材店に伝えてください。撤去する範囲が見積書に入っているかの確かめ方は、墓石の撤去の見積書と指定石材店で確かめられます。撤去を受ける石材店は、墓石の撤去を受ける業者の一覧で見られます。
工事の前後の届けと、完了の確かめ方
公営墓地では、撤去の工事をする前に工事の届けを出し、工事のあとに区画が元に戻ったかを確かめてもらいます。工事のあとの確かめ方は、次のように分かれます。
| 公式ページの記載 | 自治体の数 |
|---|---|
| 職員が立ち会う・点検する | 9自治体 |
| 完成写真を出す | 2自治体 |
| 書いていない | 13自治体 |
写真を出すと書いているのは7自治体で、職員の確認と写真の両方を求める自治体もあります。たとえば福岡市は、解体の前・カロートの撤去前・撤去後・ガレキの撤去後・工事の完了後の5枚の写真を返還の書類に付けます。
- 1工事の前に届ける神戸市と高松市は工事の7日前まで、福岡市は工事の3日前(土日祝を除く)までに届ける。川崎市は申請から許可まで最長で2週間かかる
- 2撤去の工事をする石材店が墓石などを撤去する。工事の前後の写真を撮ってもらう
- 3完了を届けて確かめてもらう川崎市は工事のあと7日以内に完了届を出して検査を受ける。神戸市は工事完成届書と完成写真台紙を出す
- 4返還届を出す仙台市は、墓園管理事務所の更地の証明を受けてから廃止届を出す。吹田市も、職員の点検を受けてから返還届を出す
返還届を出す時期は、自治体で逆になることがあります。仙台市・吹田市・京都市は区画を元に戻したあとに出しますが、静岡市は撤去工事の予定日が決まった段階で返還届を出します。
高松市のように、工事の届けが承認されるまで工事を始められない墓地もあります。なので、石材店に頼むときは「工事の届けと完了の届け、写真は、石材店でやってもらえますか」と聞いておくと安心です。墓じまい全体の順番と日数は、墓じまいの段取りと日数で確かめられます。
管理料はいつの分まで払うか
多くの公営墓地では、区画の使用料とは別に、毎年の管理料を払っています。返す年の管理料の扱いは、24自治体で次のように分かれます。
| 公式ページの記載 | 自治体の数 |
|---|---|
| 月割りで戻る | 4自治体 |
| その年度分を払う | 5自治体 |
| 払った分は戻らない | 7自治体 |
| 管理料を取っていない | 2自治体 |
月割りで戻るのは千葉市・仙台市・浜松市・堺市で、たとえば仙台市は、原状回復を終えて廃止届を出した月の分まで払い、払い済みの残りの月の分を返します。一方、京都市・神戸市・川崎市などは、年度の途中で返しても、その年度の管理料を払う決まりです。
- 月割りで戻る市
- 4月〜10月の7か月分を払い、11月〜3月の5か月分が戻る = 5,000円戻る
- その年度分を払う市・戻らない市
- 1年分を払ったまま = 0円
※ 管理料の額と返す月は仮の例です。月の数え方(1か月未満を切り上げるか切り捨てるか)も自治体で違います。
年度は4月から翌年の3月までなので、その年度分を払う市では、3月中に返すか4月にずれ込むかで、管理料が1年分変わります。相模原市は、3月末日までに手続きを全部終えて返還届を出せば翌年度の管理料はかからず、4月1日に終わっていなければ1年分かかるとしています。
なので、工事が年度末にかかりそうなときは、管理事務所に「今年度中に返すには、いつまでに何を出せばよいですか」と聞いて、逆算して石材店と工事の日を決めてください。札幌市には、2026年度だけ、墓じまいを決まった日までに終えれば管理料を全額免除する決まりがあり、くわしくは墓じまいの費用の内訳と、誰がどう分けて払うかで確かめられます。
最初に払った使用料は戻るか
区画を借りたときに払った使用料(永代使用料)が戻るかどうかも、自治体で決まっています。24自治体の書き方は、次のとおりです。
| 公式ページの記載 | 自治体の数 |
|---|---|
| 2〜3年以内なら半額 | 8自治体 |
| 使っていない区画だけ | 4自治体 |
| 年数に応じて一部 | 2自治体 |
| 戻らない | 5自治体 |
| 書いていない | 5自治体 |
一番多いのは、使用の許可を受けてから2〜3年以内に返せば半額が戻るという決まりです。遺骨を納めていない区画に限る自治体もあるので、親の代から長く使ってきたお墓は、どちらの条件にも当たりません。
ただし、千葉市と堺市は、長く使ったあとに返しても、使用料の一部が戻ります。千葉市は、一般墓地を許可から5年を超えて返しても、元に戻して返せば1平方メートルにつき6千円を返し、堺市は、3年を過ぎて返すと払った使用料の2分の1と月割りの管理料を返すとしています。
同じ自治体の合葬墓に移すとき
取り出した遺骨を、同じ市や都が運営する合葬墓(ほかの人の遺骨と一緒に納めるお墓)に移すこともできます。24自治体のうち、墓所を返す人の扱いを合葬墓の案内に書いているのは12自治体でした。
| 返す人の扱い | 自治体の数 |
|---|---|
| 使用料が無料・割引 | 3自治体 |
| 返す人の区分がある | 6自治体 |
| 市外でも申し込める | 3自治体 |
使用料が下がるのは東京都・さいたま市・神戸市です。たとえばさいたま市の樹林型合葬式墓地は、1体100,000円のところ、墓地の返還と同時に申し込めば30,000円になります。
返す人の区分があるのは、千葉市・仙台市・福岡市・広島市などです。使用料は一般と同じですが、千葉市は市内に住んで1年未満でも申し込め、福岡市は公募とは別に申し込めます。
24自治体の外も含めて、墓所を返す人への使用料や申込みの優遇を原文で確かめた15自治体を並べると、次のようになります。
無料(5自治体)
- 都立霊園の施設変更は、承継者がいない人が対象で、使用料と年間管理料が要らない
- 浦安市・真岡市は、返す墓所の遺骨を使用料なしで移せる
- 栃木市は、遺骨1体だけ無料
割引(7自治体)
- 神戸市は半額(減免の申請が要る)。富士市は返還と同時の申請なら1体5万円
- 呉市は納骨室100,000円が70,000円に
- 青森市は、遺骨の数にかかわらず1区画62,000円
別枠・優先(3自治体)
- 福岡市は公募とは別に申し込める
- 市川市は公募以外で2体まで、長岡市は返す人が優先
さいたま市・富士市・芦屋市のように、「返還と同時に申し込んだとき」に限って割引になる自治体があります。先に返還を済ませてから合葬墓を申し込むと割引にならないことがあるので、返還届を出す前に、合葬墓の担当に「墓所を返す人の割引や申込みの区分はありますか。返還届と同時に出す必要がありますか」と聞いてください。
合葬墓・樹木葬・納骨堂の違いと、取り出せるか・管理料が続くかの比べ方は、墓じまいの移す先の選び方で確かめられます。
今日やること
- 1管理事務所に電話する「墓所を返したいです。返還届の様式と付ける書類、撤去する範囲(カロート・基礎・巻石・植木)、工事の届けと完了の確かめ方を教えてください」と聞く
- 2お金のことを聞く「今年度中に返すと管理料はいくらですか。使用料や管理料は戻りますか」「同じ市の合葬墓に移すと、使用料の割引や返す人の区分はありますか」と聞く
- 3石材店に伝える聞いた撤去の範囲と、工事の届け・写真・完了の確認を伝えて見積もりを頼み、年度末にかからない工事の日を決める
遺骨を取り出す前の改葬許可は、遠くに住んでいても郵送で申請できる市区が多く、段取りは改葬許可を郵送・オンラインで申請する方法で確かめられます。