お墓の名義人とは、墓地を使う権利を持っている人のことで、役所の書類では「墓地使用者」と呼ばれます。墓じまいで遺骨を移す許可(改葬許可)は、この名義人が申請するか、名義人の承諾をもらった別の人が申請します。
名義人が遠くに住む親や兄で、実際に動くのが自分だというとき、名義人に何を書いてもらうかで進め方が変わります。名義人が元気で字を書けるなら、やり取りは郵送で済ませられます。
結論
- 名義人を申請者にして自分が役所へ出すなら「委任状」、自分を申請者にするなら名義人の「承諾書」です。福岡市の記入例でも、この2通りで書く書類が分かれています。
- 委任状も承諾書も、名義人本人が書きます。遠くにいることは代筆の理由になりません。名義人へ郵送して書いてもらい、本人確認書類の写しと一緒に返してもらってください。
- 名義人が入院中で手が動かないなら、役所に先に電話してください。認知症などで意思を示せないなら、委任状や承諾書は使えず、成年後見人が本人に代わります。
名義人が申請者、自分が提出する
- 申請書の申請者は名義人。「本人」に〇
- 名義人から自分への「委任状」を付ける
- 窓口に行くのは自分。自分の本人確認書類
自分が申請者になる
- 申請書の申請者は自分。「本人以外」に〇、続柄を書く
- 名義人が「承諾書」(申請書の承諾欄)に記入する
- 窓口に行くのも自分。委任状は要らない
委任状か承諾書か
法律の規則では、名義人でない人が改葬許可を申請するときは、名義人の承諾書を付けることになっています。一方、申請者は名義人のままで、窓口へ行く人だけを代えるときに使うのが委任状です。
京都市も、名義人の代理人が手続きを代わるなら委任状、名義人以外が申請者になるなら承諾書と分けて案内しています。福岡市の記入例は、兄が名義人で弟が動く場合を、次の2つに分けています。
- 弟を申請者にするなら、申請書の「本人以外」に〇をして続柄に「弟」と書き、承諾書欄に兄が記入します。
- 兄を申請者のままにして弟が申請書を提出するなら、承諾書欄は要らず、兄から弟への委任状を別に付けます。
| 分け方 | 申請者 | 名義人が書くもの |
|---|---|---|
| 委任状 | 名義人 | 申請書と委任状 |
| 承諾書 | 自分 | 承諾書(承諾欄) |
どちらでも、名義人が書く書類が1つはあります。違いは、許可証の名前が名義人になるか自分になるかと、申請書そのものを名義人に書いてもらうかどうかです。
四條畷市は、申請書を名義人本人が書いて代理人が持って行くなら「委任状」、代理人が申請者として申請書を書くなら「委任状兼改葬承諾書」と、1枚で済む様式を置いています。藤枝市の委任状も、「別紙申請書のとおり改葬することを承諾し」権限を委任する文になっていて、承諾と委任を1枚に入れています。
大阪市天王寺区は、名義人本人が申請者でも代理人が手続きするなら、代理人手続き用の申請書を使い、委任状と代理人の本人確認書類を付けるとしています。なので、どちらの型にするかを決める前に、今のお墓がある市区町村の様式を見てください。自分のお墓の市区町村の記載は、市区町村別の改葬許可の窓口で見られます。
委任状の書き方
改葬許可の委任状について公式ページか様式に書いている21自治体を、2026年10月18日に読みました。書いてある内容を数えると、次のようになります。
| 公式ページ・様式の記載 | 自治体の数 |
|---|---|
| 委任状の様式を置いている | 17自治体 |
| 任意の様式でよい | 3自治体 |
| 委任者本人が書く・自署する | 8自治体 |
| 代理人の本人確認書類 | 13自治体 |
| 頼む側の本人確認書類も | 5自治体 |
| 成年後見人の書き方 | 0自治体 |
委任状の欄は、どの自治体もほぼ同じで、福岡市の任意様式を例にすると次のとおりです。
委任状の見本(福岡市の任意様式の欄。中身は例)数字は仮
| 代理人(頼まれた人) 住所・氏名 | 〇〇市〇〇町1-1 〇〇 次郎 | ① |
| 委任事項 | ☑ 改葬許可申請及び改葬許可書の受領に関すること。 | ② |
| 年月日 | 〇年〇月〇日 | ③ |
| 委任者(申請者) 住所・氏名 | 〇〇市〇〇町2-2 〇〇 太郎 | ④ |
| 平日昼間に連絡の取れる電話番号 | 000-000-0000 | ⑤ |
- ①窓口に行く人(自分)の住所と氏名。代理人は自分の本人確認書類(運転免許証・マイナンバーカード等)を窓口で見せる
- ②頼むことを書く欄。福岡市は「申請」と「許可書の受領」をまとめて1つのチェックにしている。萩市のように提出と受領を別のチェックにしている市もある
- ③名義人が書いた日。申請書の日付より前か同じ日になる
- ④名義人の住所と氏名。福岡市は委任者(申請者)が全項目を書くとしていて、氏名が自署か記名押印でないと事実確認の電話がある。姶良市は「委任者本人が直筆で署名」、会津若松市は「すべて申請者本人が記載し、押印」
- ⑤役所が名義人に確かめるときの連絡先。平日の昼に出られる番号を書く
自治体によって、次のような違いがあります。
- 藤枝市の委任状には「委任者本人が来れない理由」を具体的に書く欄があり、すべて委任者が記入します。
- 石岡市・大津市・萩市・川口市・姶良市は、代理人だけでなく頼む側(名義人・申請者)の本人確認書類の写しも求めています。
- 仙台市は、申請者と同居の家族が窓口に行くなら委任状は要らないとしています。姶良市は、親族以外の第三者(墓じまい代行業者など)が提出するときに委任状を求めています。
- 姫路市・大津市・福岡市は任意の様式でよいとしていますが、見本の用紙は置いています。
役所に出す書類を、お金を受け取って人の代わりに作れるのは行政書士だけです。委任状や申請書を自分で書くのがむずかしいなら、改葬許可の手続きを受ける業者の一覧に5社の行政書士が載っています。
郵送で書類を回す順番
名義人が遠くにいるときに時間がかかるのは、名義人の署名が要る書類を往復させるところです。承諾の欄が申請書の中にある市区では、申請書そのものを名義人へ送ることになります。
県庁所在地・政令市・東京の区の57市区のうち、名義人の承諾について書いているのは29市区です。そのうち、申請書の中の欄に書けばよい市区が6市区、別の用紙を置いている市区が13市区でした。
別の用紙なら、承諾書だけを名義人に送れます。申請書の欄なら、申請書を名義人に送って書いてもらってから、管理者の証明欄に回すことになります。
- 1申請書か承諾書名義人が書く欄に付せんを貼り、「ここに住所と名前を書いてください」と手紙を添える。承諾の欄は、福岡市のように「上記申請者が改葬許可申請を行うことを承諾します」と印刷されているので、名義人は住所・氏名・電話番号を書くだけで足りる
- 2本人確認書類の写しのお願い石岡市や大津市のように頼む側の本人確認書類を求める市がある。運転免許証やマイナンバーカードの表面のコピーを一緒に返してもらう
- 3切手を貼った返信用封筒名義人が返すときに切手を買わずに済むように、自分の住所を書いて切手を貼ったものを入れる
名義人が書き終えた申請書は、次に今のお墓の管理者(お寺なら住職、霊園なら管理事務所)に送って証明欄を書いてもらい、最後に役所へ出します。会津若松市は、承諾と管理者の証明を別紙で出してもよいとしているので、別紙が使える市区なら、名義人と管理者に同時に送って日数を縮められます。
役所への提出も郵送でできる市区は、57市区のうち32市区あります。姫路市のように、遠方の申請者は事前に相談すれば郵送で対応するとしている市もあります。封筒に入れるものと定額小為替の送り方は、改葬許可を郵送・オンラインで申請する方法で確かめてください。
申請書のほかの欄の書き方は、改葬許可の申請の流れと必要書類で確かめられます。名義人が亡くなっているときは、先に名義を継ぐ手続きが要るので、名義人が亡くなっている・書けないときの墓じまいを見てください。
入院中・施設にいる名義人の署名
名義人が病院や施設にいても、自分で字を書けるなら、郵送か面会のときに書いてもらえます。問題になるのは、手が動かないなど字を書けないときです。
福岡市の記入例は、申請書の記入を「署名」か「記名押印」のどちらかと決めています。署名は自分の氏名を手書きすること、記名押印は代筆や印刷で氏名を記して本人が押印することです。
つまり福岡市の決め方では、家族が名義人の氏名を書いても、名義人本人が印鑑を押せば記名押印に当たります。
| 自治体の案内 | 名義人の承諾の書き方 |
|---|---|
| 福岡市 | 署名か記名押印 |
| 仙台市 | 署名または押印 |
| 会津若松市 | 署名または記名押印 |
| 岐阜市 | 署名 |
| 前橋市 | 自署なら押印不要 |
岐阜市のように署名だけを求める市では、代筆に本人の押印を添える方法は使えません。なので、名義人が字を書けないときは、先に今のお墓の市区町村に「名義人が入院中で字を書けません。承諾(委任状)はどう書けばよいですか」と電話してください。
改葬許可の委任状について、本人が書けないときの決まりを書いている自治体は、今回読んだ21自治体にはありませんでした。参考になるのは、住民票や戸籍の手続きの委任状について市が置いている代筆の決まりです。
意思を示せて、字を書ける
- 名義人本人が書く。印西市も、委任状は必ず委任者本人が記入・作成するとしている
- 遠くにいることは代筆の理由にならない(つくば市・日南市)
意思を示せるが、字を書けない
- 本人の意思を確かめたうえで代筆し、代筆の理由と代筆者の氏名を書く(印西市)
- 本人が署名できなければ拇印(印西市・袖ケ浦市)。委任者と代理人それぞれの本人確認書類(杉戸町)
意思を示せない
- 委任の意思を確かめられないので、委任状は使えない(杉戸町)
- 頼まれていない代筆は私文書偽造罪などの対象になることがある。成年後見制度へ
つくば市の代筆用の様式は、障害やけが、病気で直筆が困難なときだけ使え、「遠方に滞在中」などの理由では使えません。また、代理人が代筆することはできず、代理人のほかに代筆する人が要るとしています。
日南市も、「委任者が遠方にいる」「仕事で委任状がもらえない」は理由にならないとしています。遠くにいる名義人には、代筆ではなく郵送で本人に書いてもらうのが前提です。
名義人が自分で字を書ける間に、生前に名義を子へ移せる墓地もあります。都立霊園や岐阜市の例は、名義人が亡くなっている・書けないときの墓じまいで確かめられます。
成年後見人がいるとき
名義人が認知症などで物事を判断できず、家庭裁判所が選んだ成年後見人がついているときは、委任状や承諾書を名義人本人に書いてもらうことはできません。成年後見制度は、判断能力の程度で補助・保佐・後見に分かれ、本人の権利を守る人として補助人・保佐人・成年後見人が選ばれます。
| 法務省Q&A | 代理できる範囲 |
|---|---|
| 成年後見人 | 財産に関するすべての法律行為 |
| 保佐人・補助人 | 審判で定めた特定の法律行為 |
成年後見人は、本人の財産に関する法律行為について包括的に代理する権限を持つと、東京家庭裁判所のハンドブックは説明しています。保佐人・補助人は、審判で定められた範囲の行為しか代理できず、新しい事柄に代理権が要るときは、代理権付与の申立てをすることになります。
ただし、墓じまいの承諾や申請を後見人が本人に代わって書けるかどうかを、公式ページに書いている自治体は、今回読んだ21自治体の中にはありませんでした(0自治体)。なので、自分で決めつけずに、次の順番で確かめてください。
- 1後見人に伝える名義人の後見人(親族以外の弁護士や司法書士のこともある)に、墓じまいの話と、お墓の契約を終えて遺骨を移したいことを伝える。後見人は本人の意思を尊重して職務を行うので、本人が元気なころの希望も伝える
- 2役所に聞く今のお墓の市区町村に「名義人に成年後見人がついています。改葬許可の承諾(申請)は後見人が書けますか。登記事項証明書を付ければよいですか」と聞く
- 3登記事項証明書を用意する後見人が本人に代わって契約などをするときは、相手に登記事項の証明書を見せて権限を確かめてもらう使い方があると法務省は説明している。杉戸町も、法定代理人が申請するときは委任状の代わりに法定代理人であることが確認できる書類を見せるとしている。証明書は法務局に郵送でも請求できる
まだ後見人がついていないなら、申立てから審判までおおむね1〜2か月かかると裁判所は案内しています。後見が始まると、申立てのきっかけになった用事が済んだあとも本人が亡くなるまで続き、家族の意思でやめることはできないとも書いているので、墓じまいのためだけに申し立てるかどうかは、地域包括支援センターや社会福祉協議会などの相談窓口で先に相談してください。
任意後見(名義人が元気なうちに公正証書で頼む人を決めておく契約)がある場合は、家庭裁判所が任意後見監督人を選んだときから効力が生じます。契約の中に墓地の契約や改葬に関する事務が入っているかを、任意後見人に確かめてください。
名義人の承諾がどうしてももらえないときは、承諾書の代わりに裁判の謄本を付ける方法が規則にあります。親族間のもめごとと相談先は、墓じまいのトラブル事例と防ぎ方で確かめられます。
今日やること
- 1型を決める名義人に電話して、申請書を全部書けるか、承諾欄だけにするかを聞く。字を書けないなら、今のお墓の市区町村に「名義人が書けないときの承諾の書き方」を聞く
- 2様式をそろえる市区町村別の改葬許可の窓口で今のお墓の市区町村の申請書・承諾書・委任状の様式を見て印刷し、名義人が書く欄に付せんを貼る
- 3封筒を2つ用意する名義人へ送る封筒(申請書か承諾書・返信用封筒・本人確認書類の写しのお願い)と、管理者へ送る封筒(証明欄のお願い・返信用封筒)を作る