墓じまいには、法律で決まった期限はありません。放っておいても、罰則があるわけでも、翌年に撤去されるわけでもありません。
変わるのは、お墓を使う権利のほうです。墓地の使用は契約や市の許可で決まっていて、管理料が止まったり継ぐ人がいなくなったりすると、墓地ごとの規則に書かれた年数で、使用の許可が取り消されることがあります。そうなると、遺骨は合葬墓(ほかの人の遺骨と一緒に納めるお墓)などへ移されることがあります。
家族が分かっているお墓では、片付けの費用を、名義人や継いだ人に請求されることがあります。払えない・継げないと分かったら、墓地の管理者に先に伝えておけば、遺骨をどこへ移すかを自分で選べるうちに決められます。
この流れは、国が墓地の契約の見本として示した「墓地使用に関する標準契約約款」(以下、約款)と、市の条例の決まりをつないだものです。日野市の条例も約款も、「取り消すことができる」「解除することができる」という書き方で、必ずそうすると決めた決まりではありません。お寺や民間の霊園では、それぞれの墓地の規則で中身が変わります。
何年で使用の許可が取り消されるか
年数は、墓地ごとの規則に書いてあります。約款でも、管理料を払わなかったら解除できるという決まりの年数は「○年間」と空けてあり、墓地が自分で決める形になっています。
市の墓地では、条例や市の案内に書かれています。4つの市の決まりを並べました(2026年10月20日に確認)。
| 市 | 管理料を納めない | 名義人の死後、継ぐ人がいない | 名義人の住所が分からない |
|---|---|---|---|
| 日野市 | 3年間 | 2年 | 5年 |
| 広島市 | 年数の決まりなし | 2年 | 10年間 |
| 京都市 | 書いていない | 書いていない | 1年※ |
| 北九州市 | 管理料なし | 2年 | 3年 |
※ 京都市は、住所が分からないまま1年たち、しかも親族も縁故者もいないと認められるときです。「書いていない」「年数の決まりなし」は、取消しの理由の一覧に、その理由を年数つきで名指しした項目が無いという意味です。どの市も、条例に違反したときに取り消せる項目はあります(広島市なら、条例違反を理由とする取消しの号があります)。
管理料を払わないことを、年数つきで取消しの理由に挙げていたのは、4市のうち日野市だけでした。かわりに4市すべてが挙げていたのは、名義人の住所が分からなくなった場合です。名義人が亡くなったあと継ぐ人が出てこない場合も、京都市以外の3市が挙げていました。
つまり、管理料だけでなく、「名義人が亡くなったのに誰も届け出ない」「連絡がつかない」ことも、それだけで取り消せる理由になっています。
約款の解説は、管理料を払わない期間が何年なら解除してよいかは一概に決められないが、1年では短すぎるとしています。また、解除する前に、期間を決めて支払いを求める(催告する)ことにしています。
家族がいるお墓と、いないお墓
取り消されたあとの道は、そのお墓に縁のある人(法律の言葉では「縁故者」。家族や親族など)が分かっているかどうかで分かれます。
家族が分かっている
- 名義人か継いだ人が、墓石を撤去して遺骨を引き取る
- しなければ墓地が行い、費用をその人に請求する
- 日野市・北九州市の条例と案内も同じ書き方
縁のある人がいない
- 墓地の管理者が「無縁墳墓の改葬」の許可を取る
- 官報と立札で、縁のある人に名乗り出るよう1年間知らせる
- 申し出がなければ、遺骨を合葬墓などに移す
家族が分かっているお墓では、約款は、契約が終わったら名義人だった人か祭祀承継者(お墓を継ぐ人)が、墓石を撤去して遺骨を引き取るとしています。それをしないまま一定の年数がたつと、墓地が墓石を移し、改葬の手続きをして遺骨を墓地の中の合葬墓か納骨堂に移せます。
そのときにかかった実費は、名義人だった人か祭祀承継者に請求できると書かれています。日野市の条例も、取り消されたのに元に戻さなければ市が行い、その費用は使用者から取るとしています。
縁のある人がいないお墓(無縁墳墓)では、法律の施行規則(墓地、埋葬等に関する法律施行規則 第3条)の手続きになります。墓地の管理者が、縁のある人に申し出るよう官報に載せ、お墓の見やすい場所の立札にも1年間出します。その間に申し出がなかったことを書いた書面と、お墓の写真・位置図を付けて、改葬の許可を受けます。
日野市の条例も、名義人の死後に継ぐ人がいない、または住所が分からないことで取り消したときに、遺骨を無縁墳墓に改葬できるとしています。
自分の家のお墓を自分で移すときには、この官報と立札は関係ありません。2つの手続きの違いは、管理者がいない・分からないお墓の墓じまいで比べています。
遺骨と墓石の行き先
無縁墳墓の改葬をした遺骨は、合葬墓に移す市町村が一番多くなっています。総務省の実地調査で、無縁墳墓を片付ける手続きを確かめられた42市町村のうち、21市町村が遺骨を合葬式の施設へ移すとしていました(10市町村は未定)。
合葬墓は、ほかの人の遺骨と一緒に納めるお墓です。国の指針の別の見本(埋蔵管理委託型)の解説は、合葬墓でほかの遺骨と一緒になると、目的の遺骨だけを取り出すのは難しいとしています。また総務省の調査では、あとで返してほしいと言われたときに遺骨を見分けにくくなるとして、合葬式の施設に移す前に納骨堂でしばらく預かる自治体もありました。
| 調べたこと(総務省の実地調査) | 市町村の数 |
|---|---|
| 遺骨を合葬式の施設に移す | 21市町村(手続きを確かめられた42市町村のうち。未定は10市町村) |
| 墓石をすぐに処分する | 8市町村(41市町村のうち) |
墓石は、すぐに処分する市町村のほか、ずっと保管する、しばらく保管してから処分する市町村もあり、扱いは決まっていません。撤去したあとに「お参りに来たらお墓がなくなっていた」と問い合わせを受けた市町村が、墓石は元に戻さないが遺骨は返せると説明した例も、報告書に載っています。
墓地から連絡が来たり、お墓に立札が立ったりしたら、放っておかずに、書かれた連絡先に電話してください。合葬される前なら、遺骨を引き取れる見込みがあります。
どれくらい起きているか
厚生労働省の衛生行政報告例では、2024年度の改葬は176,140件で、そのうち縁のある人がいないお墓の改葬(統計の言葉では「無縁墳墓等の改葬」)は3,006件でした(2023年度は3,651件)。
ただし、この数は手続きを終えた分だけです。総務省の調査では、市や町が運営する墓地を持つ765市町村のうち、無縁墳墓が1区画以上ある(疑いを含む)と答えたのは445市町村でした。一方で、2016〜2020年度の5年間に遺骨の移し替えや墓石の撤去まで手をつけたのは、同じ765市町村のうち47市町村です。
無縁墳墓があると答えた市町村に比べて、片付けに手をつけた市町村はずっと少ないということです。総務省は、無縁墳墓の改葬には、官報と立札で1年間知らせるなど、ふつうの改葬より慎重な手続きが求められていると説明しています。
自治体が無縁墳墓に気づいたきっかけで一番多かったのは、管理料の滞納でした(総務省の実地調査で、上の遺骨の扱いとは別の集計です。調査日に無縁墳墓があった42市町村のうち20市町村)。
総務省の報告書には、縁のある人がいないと判断する目安の例も載っています。大仙市は管理料の滞納が3年程度、神戸市は10年程度で、戸籍などで調べても縁のある人が分からない場合です。ただし、目安に当たっただけで、すぐに無縁墳墓と判断されるわけではないとも書かれています。
子や親族に何が残るか
お墓は、預金や家のような遺産とは別に、お墓を継ぐ人(祭祀承継者)が受け継ぎます(民法897条。決め方は墓じまいに親族の同意は要るかにあります)。
約款では、契約が終わったときに墓石の撤去と遺骨の引き取りの義務を負うのも、墓地が代わりに撤去したときの実費を請求されるのも、名義人だった人か祭祀承継者です。名義人が亡くなっていれば、お墓を継ぐ人がその立場になります。北九州市も、更地にしなければ市が行い、費用は義務者から取ると案内しています。
なお、「管理料を少し滞納するとすぐ撤去される」という話は、約款の考え方とは違います。約款の解説は、墓地が自分で撤去するのは、繰り返し頼んでも望めないときの最後の手段としています。
ただし、払う期限が来ているのに納めていない管理料は、契約が終わっても自動的には消えない、とも約款の解説は書いています。払えないまま年数がたつと、たまった管理料と、墓地が撤去したときの実費の両方を求められることがあります。
誰がお墓を継いでいるのか分からないなら、先に決めておくと、連絡が来たときに慌てずにすみます。継ぐ人の決め方と届け出の流れは、名義人が亡くなっている・書けないときの墓じまいで順に説明しています。
お寺の墓地・民間の霊園
お寺や民間の霊園では、条例ではなく、その墓地の規則と契約で決まります。約款の解説も、墓地の契約の決まりは「墓地使用規則」などの名前になっていることが多いとしています。
約款は宗派を問わない墓地のためのもので、お寺の墓地は、お寺と檀家の結びつきがあって事情が違うとも書かれています。また国の指針は、使用期間の決め方の1つに「管理料継続制」(払われなくなって例えば3年で使用権が消え、合葬墓などに移す)を挙げています。
規則で見るのは、次の4か所です。
- 使用の権利の期間:期限のある墓地は、期限が来ると合葬墓などに移される決まりのことがある
- 管理料を払わないとき:何年で解除か、催告があるか。ここが「放っておいたら何年で」の答え
- 名義人が亡くなったとき:承継の届け出。出さないと、連絡が誰にも届かなくなる
- 契約が終わったあと:墓石の撤去・遺骨の引き取りと、墓地が撤去したとき費用を誰に請求するか
規則が手元に無いなら、墓地の管理事務所かお寺に「墓地使用規則の写しをいただけますか」と頼んでください。お寺に払うお金の話になったら、先に離檀料の相場と払う義務を読むと、規則のどこを見ればよいかが分かります。
放っておく前にできること
総務省の報告書は、継ぐ人がいないと見込まれるなら、名義人のほうから墓地を返してもらう(墓じまい)ことで無縁墳墓を防ぐ、という考え方を示しています。墓じまいの全部をすぐにやらなくても、小さな手から始められます。
| できること | 何が変わるか |
|---|---|
| 承継の届け出をする | 連絡と請求の相手がはっきりする |
| 使い続けないと届け出る | 契約を終える手続きに入れる |
| 同じ自治体の合葬墓に移す | 使用料の優遇がある所も |
承継の届け出と、使い続けないときの届け出の流れは、上で挙げた名義人の記事にあります。使い続けない届け出は、契約が終わる理由の1つです。
公営墓地には、お墓を返す人が同じ自治体の合葬墓に移るときの割引や優先の枠を設けているところもあります。返し方と、戻るお金や優遇の一覧は公営墓地の墓じまいにあります。全部でいくらかかるかは費用の目安、墓石の撤去を頼む業者は業者の比較を見てください。
どれを選ぶにしても、最初の一歩は墓地の管理事務所かお寺への電話です。「〇〇家のお墓の名義人と、管理料がいつの分まで払われているかを教えてください。管理料を払えなくなったとき、何年で使用の許可が取り消されますか」と聞けば、自分のお墓に残された時間が分かります。墓じまいを進めると決めたら、遺骨を移す許可の取り方は改葬許可の申請の流れと必要書類に、お墓がある市区町村の窓口は市区町村別の改葬許可の窓口に載せています。