墓じまいで遺骨を別の場所へ移すには、市区町村の改葬許可(遺骨を移す許可)が要ります。この申請に、親族全員の同意書を付ける決まりはありません。国の規則で要るのは、今のお墓の名義人の承諾です。ただし、市区町村や移す先が、独自に親族の書類を求めることはあります。
| 場面 | 役所や墓地に出すもの |
|---|---|
| 名義人が自分で申請 | 規則の上では親族の書類は無し |
| 名義人でない人が申請 | 名義人の承諾書 |
| 名義人が亡くなっている | 継ぐ人を決めてから(相続人全員の承諾を求める市もある) |
| 移す先が同意書を求める | 移す先の様式 |
書類が要らなくても、反対している親族を置いて進めると、あとでもめる元になります。話す順番と、反対の理由ごとの答え方は後の章にあります。
法律で要る同意
改葬許可の申請書に付ける書類は、墓地、埋葬等に関する法律施行規則2条2項が、次の3つを挙げています。
- 今のお墓の管理者の証明:遺骨が納められていることを、お寺や霊園の管理者が証明する書面(1号)
- 名義人の承諾書:申請する人が名義人でないときだけ。承諾の代わりに、裁判所の書面を付ける道もある(2号)
- 市町村長が特に必要と認める書類(3号)
この中に、兄弟や親族全員の同意書はありません。ただし3号があるので、市区町村が独自に親族の書類を求めることはあります。下の武蔵野市の例がそれに当たります。
県庁所在地・政令市・東京の区の57市区の公式ページを数えると、名義人でない人が申請するときに名義人の承諾書が要ると書いているのは24市区でした。名古屋市と山口市は、同じ場面で、承諾書ではなく、名義人からの委任状を求めています。新宿区・練馬区・大分市は、移す先の墓地の名義人が申請する人と違うときの承諾書だけを書いています。残りの28市区は、承諾のことを公式ページに書いていません。
承諾書の欄の書き方と、委任状との違いは、名義人が亡くなっている・書けないときの墓じまいで説明しています。自分のお墓がある市区町村の書き方は、市区町村別の改葬許可の窓口で見られます。
親族の書類が要る2つの場面
ただし、次の2つの場面では、名義人のほかの親族の承諾や同意を、書類で求めるところがあります。
名義人が亡くなっている(武蔵野市)
- 今の名義人が亡くなっているときは、相続人全員の承諾が要る
- 改葬許可を申請する前に、関係する親族や寺院と打ち合わせて移す先を決める
移す先が合葬(千葉市の合葬式樹木葬墓地)
- 「埋蔵された焼骨は返還されないことについての同意書」を出す
- 配偶者・親・子がいればその全員、いなければ兄弟姉妹全員の同意
名義人が亡くなったままのお墓なら、まず市区町村の窓口に「名義人が亡くなっています。相続人の承諾は何人分要りますか」と聞いてください。合葬の墓や樹木葬に移すなら、申し込む前に、移す先に「親族の同意書は要りますか。誰の分が要りますか」と聞きます。移す先が同意書を求めるときは、その同意がそろうまで申し込めません。
書類で要らなくても、黙って進めないでください。兄弟姉妹で墓じまいを考えているという総務省の行政相談に、行政相談委員は、まず親族間で移す先を決めてから、市町村の改葬許可を受けるよう案内しています。横浜市も、手続きを始める前に親族内で話し合うことも必要だとしています。
話す順番と中身
移す先と契約する前に、お墓に入っている人の子や兄弟に話してください。払ったあとに取り消せない移す先があるからです。仙台市のいずみ墓園の合葬式墓所は、使用料を一度納めたあとは、取り下げも辞退もできず、使用料も返らないとしています。そのため、払う前に家族・親族と十分に相談するよう求めています。宇都宮市の合葬墓も、許可のあとで辞退することがないよう、前もって親族で十分に話し合ってから申し込むよう案内しています。
話す相手は、お墓に入っている人の子や兄弟が中心です。『国民生活』の墓園協会の解説は、墓じまいの前になるべく多くの親族と相談し、良い点と悪い点を話し合うよう勧めています。普段付き合いの無い親戚にも、決める前に案を送り、意見を聞いてください。
墓じまいのあとに争いにならないとは言い切れません。心配なら、進める前に弁護士に相談してください。
- 1名義人・継ぐ人で決める誰の名前で申請し、誰が契約と支払いをするか
- 2子や兄弟に相談する決まったこととしてでなく、案として出す。移す先と契約する前に
- 3管理者に話すお寺や霊園に、埋蔵の証明と返す手続きを聞く
- 4移す先と契約する親族の了解がそろってから払う
2番目で切り出すときは、たとえば次のように言えます。
例:「お墓の管理を続けるのが難しくなってきたので、墓じまいを考えています。まだ何も申し込んでいません。遺骨の行き先と費用の分け方の案を作ったので、意見を聞かせてください。」
案を見せるときは、次の3つを書いた紙と、そのもとになる書面を一緒に見せてください。
| 決めること | 一緒に見せるもの |
|---|---|
| 遺骨の行き先 | 移す先の募集要項・契約書の案 |
| 費用の分け方 | 見積書と分け方の案 |
| 日程 | 閉眼供養・取り出し・撤去の予定 |
費用の内訳と、親族で分けるときに決めておくことは墓じまいの費用の内訳と、誰がどう分けて払うかへ、日程の組み方は墓じまいの段取りと日数にあります。見積書がまだなら、撤去の見積もりの相談から依頼できます。
反対の理由ごとの答え方
公的機関が公開している相談事例で、親族どうしの反対そのものを扱ったものは見つかりませんでした。そこで、反対の理由になりうる点ごとに、自治体の募集要項や国の資料に書いてあることを当てます。
| 反対の理由 | 公的な記載 | 返し方 |
|---|---|---|
| 遺骨が戻らない | 合葬後は返せない | 個別安置か分骨 |
| お参りの場所が無くなる | 分骨の決まりがある | 一部を手元や別の墓へ |
| ご先祖に申し訳ない | 答える資料は見当たらない | 供養の続く移す先・分骨 |
| 自分が継ぎたい | 継いで使い続けられる | 墓じまいをやめて承継 |
| お寺に悪い | 同じく見当たらない | お寺に先に相談 |
| 住職が反対している | 住職の反対の行政相談 | 証明書を断られたら市区町村に相談 |
| お金を出したくない | 分け方の決まりは無い | 分け方の案を出す |
遺骨が戻らない
公営の合葬墓・樹木葬・納骨堂の15自治体の募集要項では、埋蔵したあとは返せないと書いているのが6自治体、合祀したあとは返せないと書いているのが1自治体でした。個別に安置している間なら返せる、または相談できると書いているのは3自治体(神戸市・宝塚市・仙台市)です。
千葉市も、合葬式樹木葬に納めた遺骨は返せないので、申し込む前に親族でよく話し合い、理解を得ておくよう求めています。「戻せないのが嫌だ」と言われたら、何年か個別に安置してから合葬する所にするか、一部を分骨して残す案を出せます。移す先の比べ方は、墓じまいの移す先の選び方で詳しく扱っています。
お参りの場所が無くなる
分骨は、千葉市の説明では、遺骨の一部を別のお墓に納めたり、手元供養したりするために分けることです。施行規則5条は、分骨した遺骨をほかのお墓に納める人が求めれば、今のお墓の管理者は埋蔵の事実を証明する書類を出さなければならないとしています。
墓じまいの遺骨の大半は合葬墓へ移し、一部を反対している親族の近くのお墓や手元に残せば、お参りの場所を残せます。分骨の証明書のもらい方と、手元に置くときの扱いは、分骨・散骨・手元供養の手続きを見てください。
ご先祖に申し訳ない
言い返すより、墓じまいのあとも遺骨がどこで、どう守られるかを具体的に見せてください。
公営の合葬墓は、納めたあとも自治体が管理します。たとえば木津川市は、合葬墓地は市が管理を行うとしています。ただし、宇都宮市のように、市では合葬墓の法要を行わないと書いているところもあります。法要を続けたい親族がいるなら、お寺の永代供養墓など、法要を続ける所を移す先の候補に入れてください。
一部を分骨して手元や身近なお墓に残す案も出せます(前の小見出し)。取り出す前にお寺にお経をあげてもらう閉眼供養のことは、墓じまいの閉眼供養にまとめました。
自分が継ぎたい
継ぎたいという親族がいるなら、墓じまいをしないで、その人がお墓を継ぐ道があります。継いだ人が墓地に出す届け出は、名義人が亡くなっている・書けないときの墓じまいにまとめています。
その人が管理料を払い続け、お参りや法要を引き受けられるかを、一緒に確かめてください。継ぐ人が決まらずに争いになるなら、最後の章の家庭裁判所の手続きになります。
お寺に悪い
親族に案を見せるのと同じ時期に、お寺にも先に相談し、お寺の返事をそのまま親族に伝えてください。
住職が反対している
住職そのものが反対しているときは、親族の話とは別に、お寺との話になります。
総務省東北管区行政評価局の資料には、墓地を管理する寺院の住職から反対されているという行政相談が載っています。同じ資料は、管理者とのトラブルで埋蔵の証明書が取れなくても、代わりの書面を付けて改葬許可を申請できるとしています。寺院が証明書の作成を拒んだ例では、市町村が、墓の契約書や使用許可証、墓石・墓誌の文字の写真、戸籍の謄本を出してもらって改葬を許可していました。
お寺が証明書を書かないときはお寺が埋蔵証明書を出してくれないときを、離檀料の話でもめているなら離檀料の相場と払う義務を読んでください。
お金を出したくない
国の墓地の契約の見本(標準契約約款)は、墓石の片付けと遺骨の引き取りをするのは名義人で、名義人が亡くなっていれば祭祀承継者だとしています。費用を兄弟でどう分けるかは書いていません。出したくないという親族には、出さない代わりに何を引き受けるか(手続き・立ち会い・分骨した遺骨の供養など)を含めた案を出してください。
決めたことの残し方
役所に出すのは、名義人の承諾書など市区町村が決めた書類です。親族と決めた中身は、それとは別に、家族の間で確かめる紙として残しておきます。
親族で決めたことを残す紙の見本(中身は例)数字は仮
| お墓 | 〇〇寺墓地 〇区〇番(名義人 〇〇 一郎) | ① |
| 遺骨の行き先 | 〇〇市の合葬墓(納めたあとは取り出せない) | ② |
| 分骨 | 次男 〇〇が、父の遺骨の一部を手元で供養 | ③ |
| 費用 | 撤去と移す先の費用を3人で等分 | ④ |
| 日程 | 〇年〇月に閉眼供養、同じ月に取り出し | |
| 署名 | 長男・次男・長女が日付と名前を書く | ⑤ |
- ①お墓の場所と、今の名義人の名前を書く
- ②合葬で取り出せないなら、そのことも書いて全員に読んでもらう
- ③分骨するなら、誰が、どの人の遺骨の一部を受け取るか
- ④分け方は、見積書のどの額をもとにするかまで書く
- ⑤それぞれが自分で書く。遠くの人には郵送で回し、全員分の写しを配る
この紙は家族の間で確かめるためのもので、役所や墓地に出す書類ではなく、法的な効力も別の話です。移す先が同意書の様式を決めているとき(千葉市の合葬式樹木葬墓地など)は、その様式を使ってください。
名義人が亡くなっている・継ぐ人が決まらないとき
名義人が亡くなっているなら、誰がお墓を継ぐかを先に決めます。継いだ人が名義人として申請します。ほかの親族が申請するなら、継いだ人の承諾書が要ります。
民法897条では、お墓は、亡くなった人が指定した人が受け継ぎます。指定が無ければその家や地域の慣習で決まり、慣習もはっきりしなければ家庭裁判所が決めます。この、お墓を受け継ぐ人を「祭祀承継者(さいししょうけいしゃ)」と呼びます。
家庭裁判所の案内では、お墓は遺産分割の対象になりません。法テラスも、相続放棄をしてもお墓などは受け継げると説明しています。預金や家の分け方がまとまっていなくても、お墓を継ぐ人だけを先に決められます。
継ぐ人が決まっていれば、その人が墓地に名義の承継を届け出て、改葬許可を申請します。決まっていなければ、配偶者や子などで話し合い、それでも決まらなければ家庭裁判所に申し立てます(下の小見出し)。
都立霊園は、配偶者と子の全員で話し合って継ぐ人を決めたときは、全員が記名押印した協議成立確認書を出すよう求めています。話し合いで決めるなら、話し合う前に、墓地にこうした書類の様式があるかを管理者に聞いておいてください。
家庭裁判所の調停と審判
親族の話し合いで継ぐ人が決まらないときは、家庭裁判所に「祭祀に関する権利の承継者の指定」の調停か審判を申し立てます。調停は家庭裁判所での話し合いで、まとまらなければ審判で家庭裁判所が決めます。最初から審判を申し立てることもできますが、審判を申し立てても、裁判所の判断で調停に回されることがあります。
広島家庭裁判所の説明では、調停は非公開の話し合いの手続きで、裁判官(又は家事調停官)と、民間から選ばれた家事調停委員2名(男女各1名)が進めます。同じ説明で、祭祀承継者の指定は、調停がまとまらなかったあとに審判ができる申立ての例に入っています。
申し立てるときの費用と書類は、家庭裁判所が一覧で示しています。名古屋家庭裁判所の一覧では、次のとおりです。
| 項目 | 名古屋家庭裁判所の一覧 |
|---|---|
| 収入印紙 | 申立書ごとに1,200円 |
| 郵便切手 | 合計2,300円 |
| 主な添付書類 | 戸籍一式・祭祀財産の目録・墓地の使用権の証明書と、相手方の人数分の申立書の写し |
| 申し立てる先 | 調停なら相手方の住所地、審判なら相続が始まった地(どちらも、当事者が合意で決めた家庭裁判所も可) |
戸籍は、申立人と相手方、相続人全員の分と、亡くなった人の生まれてから亡くなるまでの分が要ります。額と添付書類は名古屋家庭裁判所の一覧のものなので、申し立てる家庭裁判所の案内も見てください。
調停でどうなりそうかという見通しは、家庭裁判所では答えないとされていて、弁護士や法テラスへの相談が案内されています。法テラスのサポートダイヤルは0570-078374(平日9時〜21時・土曜9時〜17時)で、無料の法律相談を受けられるかを聞けます。
名義人が生きていて承諾しないときは、規則の上では、承諾書の代わりに、名義人が承諾しなくても移してよいと決めた裁判所の書面を付ける道もあります(規則の言葉では「これに対抗することができる裁判の謄本」)。どんな裁判がこれに当たるかは、自分で判断せずに弁護士に聞いてください。
自分が名義人か、墓地の名義をすでに自分に替えていて、反対しているのがほかの親族だけなら、ここまでの手続きは要りません。規則の上では、改葬許可の申請に親族の書類は要らないので、話し合いを続けながら手続きの準備を進められます(市区町村や移す先が独自に求める書類は別です)。
業者に相談するとき
手続きや片付けを業者に頼むなら、墓じまいの業者の比較で、改葬許可の書類を作るのが行政書士か、業者は提出だけかを見比べてください。業者に相談するときは、名義人の名前と、親族で決めた紙の写しを持っていき、誰の名前で契約するかを最初に伝えます。