墓じまいは、お墓から遺骨を取り出して別の場所に移し、墓石を片付けて区画を返すことです。遺骨を移す「改葬(かいそう)」の件数は、2014年度の約8万4千件から、2024年度には約17万6千件に増えています。
墓じまいのメリットは、毎年の管理料と、遠いお墓の世話・お参りから解放されることです。デメリットは、合葬した遺骨・散骨した遺骨・返した区画が元に戻せないことです。迷っているなら、全部しまう前に「一部だけ移す」「近くの人に託す」という道もあります。
親族への話し方や同意書のことは、墓じまいに親族の同意は要るかにまとめています。
メリット(楽になること)・デメリット(戻せないこと)
墓じまいで楽になるのは、お金と手間の「これから毎年かかる分」です。反対に戻せなくなるのは、遺骨と区画、お寺との関係、そしてお参りしてきた場所です。
楽になること
- 毎年の管理料(横浜市の三ツ沢墓地なら年5,000円)
- 遠いお墓の掃除・草取り・お参りの移動
- 子や孫にお墓を継がせる必要
戻せなくなること
- 合葬墓に入れた遺骨・散骨した遺骨
- 返した区画と、最初に払った使用料
- お寺の檀家としての関係
- 近くでお参りしてきた人が手を合わせる場所
戻せないこと
いちばん重いのは遺骨です。公営の合葬墓・樹木葬・納骨堂の15自治体の募集要項や案内を読むと、遺骨を返せるかどうかを書いている10自治体は、どこも「ほかの遺骨と一緒に納めたあとは返せない」としていました。
| 募集要項の書き方 | 自治体の数 |
|---|---|
| 返せるかを書いている | 10自治体 |
| うち個別に置く間は返せる・相談 | 3自治体 |
| 返せるかを書いていない | 5自治体 |
たとえば札幌市の合同納骨塚は、骨壺から出してほかの人の遺骨と一緒に納めるので、納骨したあとの引き取りは一切できないと案内しています。
散骨も戻せません。厚生労働省の研究でまとめられた散骨のガイドライン(散骨事業者向け)は、散骨を、遺骨を粉状に砕いて陸地や水面にまくことと定め、まく場所を、陸上なら決めた区域、海なら海岸から一定の距離以上離れた海域としています。まいたあとで、別のお墓に納め直すことはできません。
区画も、一度返すと元には戻りません。東京都の消費生活総合センターは、墓地を返しても、最初に払った永代使用料(墓地を使う権利の代金)は戻らないのがふつうだと説明しています。申し込んだあとで辞退できない合葬墓もあるので、払う前に決まりを読んでください。
移す先ごとの合葬の時期や、個別に置ける年数は、墓じまいの移す先の選び方で比べられます。
お金の比べ方
お金は「残すと毎年かかる額」と「しまうと一度にかかる額」を、同じ年数で並べて比べます。墓じまいの総額には公的な相場が無いので、一度にかかる額は自分の見積書で出します。
残す側は、管理料に年数を掛けます。たとえば横浜市の三ツ沢墓地(年間管理料5,000円)をあと20年残すなら、管理料だけで100,000円です。お参りの交通費は別で、自分の1回分に回数と年数を掛けて足します。
公営墓地の管理料は、霊園や面積で違います。都立の多磨霊園の一般埋蔵施設なら、年間管理料は1,620〜9,720円です。お寺の墓地なら、毎年お寺に納めているお金を、領収書や通帳で拾い出してください。
しまう側は、改葬許可の手数料・閉眼供養のお布施・墓石の撤去・移す先の費用の4つを足し、お寺の墓地なら、求められることがある離檀料も考えに入れます(払う義務はありません)。墓じまいを一式で受ける2社の、広さ別の料金表でいちばん小さい区画の額は、一休堂が0.75㎡で165,000円〜(墓石の撤去と処分などを含む)、イオンライフが1㎡未満で195,800円〜(行政手続きの代行と遺骨の取り出しも含む)です。お金の分け方は墓じまいの費用の内訳に、自分の条件での目安は費用の目安ツールにあります。
見落としやすいのが、しまったあとの毎年の費用です。公営の合葬墓の15自治体のうち9自治体は毎年の管理料がかからず、3自治体は管理料がかかり、残りの3自治体は管理料のことを書いていませんでした。神戸市は、合葬墓は市が管理するので維持費も、子や孫に継ぐ必要も無いと案内しています。
もう1つは、遺骨の数です。国民生活センターの『国民生活』に載った全日本墓園協会の横田睦氏の解説は、永代供養墓などに納めるほうが、新しくお墓を建てるより費用がかかることもあると指摘し、骨壺6つを1つ30万円で預けると180万円になる計算を例に挙げています。納めてある遺骨の数は、お墓の管理者や石材店に聞けば分かります。
残すと決めても、払わずに置いておくのは別の話です。横浜市は、管理料が5年間納められないと、条例で使用許可の取消の対象になると案内しています。放っておいたときの流れは墓じまいしないとどうなるにあります。
移した先で起きた後悔
公的な窓口に寄せられた相談には、移した先で困った例があります。
| 相談の中身 | 公開した機関 |
|---|---|
| 遠くの永代供養墓から移したい | 総務省東北管区(国民生活センターが受け付けた事例) |
| 聞いていない費用 | 国民生活センター |
| 納骨堂の事業者が破綻 | 札幌市 |
1つ目は、遠くのお寺の永代供養墓に納めた両親の遺骨を、近くの霊園に移したいのに、僧侶から高額な離檀料を言われて進まないという相談です。2つ目は、納骨堂の運営会社から、納骨手数料のほかに聞いたことのない名目で約22万円がかかると言われた事例です。3つ目は、6年前に70万円で契約した納骨堂の運営会社が破綻し、事業者から連絡が無いまま、遺骨を持ち帰らなければならなくなった相談でした。
ここから言えるのは、移す先をお参りする人の家から通えるかでも選ぶこと、代金のほかにかかる費用を移す人数分まで書面でもらうこと、運営しているのが自治体か、お寺か、会社かを確かめることです。今のお寺ともめたときは離檀料の相場と払う義務、移す先ともめたら墓じまいのトラブル事例と防ぎ方に相談先があります。
墓じまい以外の道
「管理できないお墓をどうするか」の答えは、墓じまいだけではありません。
| 道 | 今のお墓 | 改葬許可 |
|---|---|---|
| 継ぐ人を決めて残す | 残る | 要らない |
| 近くの親族・住職に託す | 残る | 要らない |
| 一部だけ分骨して近くへ | 残る | 要らない |
| 同じ市の合葬墓へ移る | 返す | 要る |
託す道は、前の章の横田氏が挙げているものです。お墓の近くに住む親族に、この先の管理をお願いしてお金を渡す方法や、お寺の墓地なら住職に管理を託す方法で、改葬の手続きが要らず、遺骨もそのまま残ります。
分骨は、遺骨の一部だけを分けて、家の近くのお墓や手元に置くことです。広島市は、お墓や納骨堂の管理者から分骨証明書をもらえばよく、本骨(元の遺骨)を動かさない限り改葬の手続きは要らないと案内しています。お参りを続けたい人が遠くにいる家に向きます。分骨の書類は分骨・散骨・自宅で手元供養するときの手続きにあります。
市や都の墓地なら、同じ自治体の合葬墓に移る道もあります。墓所を返す人が合葬墓に移るときの割引や優先の枠を設けている自治体があり、その一覧は公営墓地の墓じまいにあります。
しまう方が合う
- 継ぐ人がいない
- お参りを続けたい人もいない
- 親族が合葬・散骨に同意している
残す・託す方が合う
- 近くに管理を頼める親族がいる
- 親戚がそのお寺の檀家として残る
一部だけ移す方が合う
- 遠くの人だけが近くでお参りしたい
- 全部を合葬にすることに反対がある
どの道でも、決める前に、移す先の募集要項か使用規則で「返還」と「管理料」の欄を読み、今のお墓の管理者に、納めてある遺骨の数と返すときの決まりを聞いておきます。しまうと決めたら、順番と日数は墓じまいの段取りと日数で組めます。業者に頼むなら、遺骨の数と区画の広さを持って、業者の比較から2社以上に見積もりを頼めます。お寺や移す先との契約でもめたら、消費者ホットライン(188)に相談できます。